リハビリ人間のよろずブログ

思ったことをいろいろ記録しています。

書評

アマルティア・セン 著『貧困と飢餓』を読んで

・飢餓は食料供給の減少からなるというアプローチでは飢餓が発生する十分な説明にはならず、所有の権限からのアプローチで飢餓を捕らえた方が有効なケースが多い。例えば供給量が十分でも、ある層の所得が急上昇して食料需要が上がり価格が上昇すると、それ…

瀧澤 弘和 著『現代経済学』を読んで

著者の経済学の捉え方に感銘を受ける。論点が色々あり、別々の感想があるような気がするのでそれぞれのメモを箇条書きし、後々まとめれたらいいと思う。 ・そもそも前回読んだ「金融工学の挑戦」で少々踏み込んだ書評を書いたのだが、自信がなく反論の可能性…

杉田 弘毅 著『アメリカの制裁外交』を読んで

この書がアメリカの制裁手段としてドル決済の停止の有効性、その影響力をわかりやすく著された良書なのは確かだ。 アメリカがドル決済の停止による金融制裁を多用し始めたのはオバマ政権以降であり、トランプ政権になると武力行使を忌避する自身の意向から無…

守屋毅 著『元禄文化』を読んで

読んだばかりで全然読みは浅いので間違いだらけだと思う。第二章の悪所という観念が面白かった。 元禄の頃、遊里(色街)は悪所と言われていた。遊里は実世界とは隔離されていて(実の世界とは隣り合わせでもあったが)そのような世界で繰り広げられているや…

太田光 著『芸人人語』を読んで

太田光の主張は一貫しているのでフォロワーだったら目新しい箇所はさほどない。だがそれは欠点にならず、むしろ通底に存在する一貫性が彼を信用させる一助となる。 様々なものに影響され、それによって培われた持論を守る故に視点が限定されがちで、長年追っ…

三木義一 著『日本の納税者』を読んで

もうかなり以前の話になるが、ある人気タレントが税務調査を受けた際、当局が高額の所得隠しの指摘し、それに従い修正申告と追徴税を支払った。その会見の際、彼は植毛治療を経費にしていたと弁明したが世論はそれを受け入れず、彼の芸能生活は事実上の終焉…

エミリー・ブロンテ 作『嵐が丘』を読んで

解説をまだ読んでないので凡庸な感想かどうか分からないし、歴史的背景を調べてまで書こうとも思わない。だからいい加減で無責任である。 題名である嵐が丘と作者が名付けたのは、ヒースクリフの存在がアーンショウ家にとって大きな厄災をもたらす悪魔的存在…

夏目漱石 作『吾輩は猫である』を読んで

ネット上に於いて繰り広げられるやり取りは得てして、物事を単純視し短絡的な考えで人を罵倒し、バカにしがちだ。しかし、その対象が自分の期待を裏切るとプライドが傷つくのか激怒し、余計に執着して過激化へと向かい、あら探しに終始するのを私は嫌と言う…

大竹 文雄 著『行動経済学の使い方』を読んで

経済学の知見を実社会に応用しようとしたら、かなりの場面で生活者の慣習と衝突したり、利害に影響を与えるので政治的決着を求められ玉虫色的になることが多い。 行動経済学は政府や生産者側が消費者側(必ずしも一方的では無いだろうが政府、生産者側からの…

湯本雅士 著『新・金融政策入門』を読んで

本書の概略は省略して、感想というか本書を読むことによって産まれたくだらない持論のみ記述する。 期待に働きかけることを政策に組み込む(金融政策ならフォワードガイダンス)ことはマクロ経済学の研究の進展によって有効であると理論化?されたので各国の…

坂牛 卓 著『教養としての建築入門』を読んで

メモとかを残さず読み進めるのでどうしても後半の部分が印象に残り、感想に反映される。 第3部の社会論で建築と社会の関わり方を論じているが、どのように建築と向き合っていくかであったり、建築を鑑賞するための方法論を提示し、素人でも独自の建築論を持…

サマセット・モーム 作『月と六ペンス』を読んで

英語勉強ということで原文で半年かけてゆっくり読んだ。私の英語力では誤読もあるし、何より読むのに長い期間をかけたので、失念していることが多く評論にはなりえないだろうと思う。 モームという作家は自他ともに認める通俗作家であり、本作も通俗小説とし…

樋田毅 著『旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録』を読んで

統一協会の幹部でありながら協会の反社会的な行動を諌め、自身の懺悔としてその反社会的行動の実態や教団の様々な疑いに対して私的見解を述べている。 統一協会に対しては櫻井義秀 著『統一協会』を読み、教祖の文鮮明の軌跡や統一教会の実態などを知ること…

二神孝一 、堀敬一 共著『マクロ経済学 第2版』を読んで

成長理論を読んでの感想 ソローモデルにおいて人口成長率は外生変数だが、技術進歩率が内生変数としてその究明に研究が盛んに行われているように、表現が間違っているかもしれないが内生変数?として扱い人口増加の研究をしていく必要があると思う。 資本の…

神取 道宏 著『ミクロ経済学の力』を読んで

中級クラスの経済学となると使う数式も増えてくるので直観的な理解が難しくなるが、本書では数式も高校レベルの数学の範囲に収め繰り返し読めば数学を苦手にしている読者でも理解出来るものになっている。 巷に溢れるミクロ経済学の教科書と同様に価格理論を…

立石 泰則 著『戦争体験と経営』を読んで

経済を専門とする職業ライターが書いたので読みやすく、さっと読めた。ただ書き手としての技術の高さ故か、読み物として面白くするような技術を散りばめられているような気がして、専門家の著した本よりは重厚さには欠ける。しかし、著者もそれは意図してい…

新保 恵志 著『金融サービスの未来』を読んで

本著は主に、銀行に対する資金の貸し手である預金者が、銀行に勧められた金融商品によって、本来なら守られるべき資産の損失が生じてきた、1990年代末から実施された金融ビッグバンによる規制緩和から生じた欠陥を軸に、これからの商業銀行のサービスを預金…

長谷部恭男 著 「憲法とは何か」を読んで

高名な憲法学者が憲法の役割や立憲主義における立ち位置などを初学者にも分かりやすく解説した本である。初版は2006年とだいぶ古いがその当時より、憲法改正の機運が徐々に高まっていたのを記憶している。 本書の主な主張は憲法の硬性性を訴え、無闇な憲法改…

内田博文 著「治安維持法と共謀罪」を読んで

国家権力が市民組織を抑えるためにどのような法が形成されてきたのかを概括的に著された書であり、教科書的に読める。専門性は極力取り除かれているものの、要諦はきちんと抑えているので啓蒙書としての新書の役割を十二分に果たしている。 ただ事実を教科書…

萬代 悠 著「三井大坂両替店」を読んで

著者はSNSにおいても積極的に情報を出していて、そこでは細部にこだわる著者の気質を窺い知ることができるが、本書では特に第3、4、5部でそれを全面に押し出しているように見える。 教養書として読むような私のような一般読者には少々冗長に感じるところがあ…

ガルシア・マルケス作「百年の孤独」を読んで

センチメンタルで散歩好きな私はよく音楽や、ラジオを聴きながら色んな所を歩き回るのですが、その時のヘビーローテーションは、散歩している風景の中に一緒に組み込まれて、後年、音とその風景が郷愁的な感覚として強く残っていることが多く、この辺ではあ…

渡邊 泉 著 「会計学の誕生」を読んで

ブクログに書評をたまに書いているのですが、昨今のサイバー攻撃でデータが吹っ飛んだら寂しいのでリスクヘッジします。また、新しく毎日考えるのもしんどいので… 会計学の誕生-複式簿記が変えた世界 (岩波新書) 作者:渡邉 泉 岩波書店 Amazon 自分がこの本…