リハビリ人間のよろずブログ

思ったことをいろいろ記録しています。

アマルティア・セン 著『貧困と飢餓』を読んで

・飢餓は食料供給の減少からなるというアプローチでは飢餓が発生する十分な説明にはならず、所有の権限からのアプローチで飢餓を捕らえた方が有効なケースが多い。例えば供給量が十分でも、ある層の所得が急上昇して食料需要が上がり価格が上昇すると、それに取り残された少ない?権限しか持たない貧困層は食料を得られる機会が減少する。


・今、世界は気候変動で食料供給の不確実性が増している。世界中で同時に不作が起こるケースがあった場合、この権限アプローチは有効性を持つのだろうか?要するに、他国からの食料調達費用が急上昇した場合である。そのような場合、市場原理よりも例えば配給など政府含む公共部門が本書で述べられてる以上の役割を果たす必要があるのだろうか?


・農産物を国家の戦略物資にしているアメリカやロシアのような大国の農業品に対する価格優位が高まった場合、市場原理を重視したグローバル化が加速していくと現地生産が減少するだろう。コロナウイルスで見られたような国境封鎖が行われた場合、一気に食料不安が勃発する可能性も考えられる。農産物は、生産されるまで時間がかかり短期間で超過需要を満たすことは難しい。そのような生産地の集約化により脆弱性が高まることはないだろうか。


・農産物の市場化を押し進めると、民間の商人が価格を操作し価格を釣り上げる可能性も出てくる。本書で述べられているように備蓄量の増加はそれに対応する意味で必要である。日本に置いてもコメ先物が再開するかもという報道を目にした。為替相場の安定のためドル等外国通貨を大量に保有するように、相場の安定のために米の十分な備蓄が求められる。